民1

いわゆる<民法>というのは、ヒトや法人同士の権利の取り扱いについて定めた法律ですが、
民法はその中でも特にヒトとヒトとの関係にねらいを絞ったもので、自由や平等を大原則にしています。<民法>には含まれても民法ではないものは特別法と呼ばれ、
これには商法や労働法、消費者法といったものがあります。
商法は法人同士の関係について取り扱ったもので、個人では不可能な大規模の取引に最適化された法律群です。
労働法や消費者法は法人と個人のパワーバランスの非対称性を踏まえて、
労働者や消費者の権利を守るために作られた法律群です。


この記事では、民法の、出生について扱います。主に887条と890条です。


ヒトは出生を経て主体となります。
この場合の主体というのは人権などの権利の主体となるということです。
何をもって出生とするかについては、

  • 一部露出説: 胎児の体の一部が母親の体外に出ることが条件
  • 全部露出説: 胎児の体が完全に母親の体外に出ることが条件
  • 独立呼吸説: 胎児が母親の体外に出、自力で呼吸することが条件

の三つがあり、どれが適当であるかについては議論がなされていて、常にどれということはありません。
ただ刑法に関しては大抵一部露出説がとられるようですが、
これは母親から独立して胎児だけが被害を受けることが可能になるからです。

いずれの説をとるにしても、(少なくとも日本の法律では)胎児は権利の主体ではない、
つまり人間ではないと考えられています。
またもし体がすべて露出しても、胎児が既に死んでいた場合は出生とは認められず、
(ヒトではなくて)胎児の死骸が母親から出てきた、という捉え方をするようです。

胎児は権利の主体として認められていないので、胎児を相手に取引をすることはできません。
例えば胎児を相手に贈与契約を結ぶことはできませんが(もちろん個人的にあげた、と決めることはできますが)、
これは胎児が生まれるのを待って与えれば済むことです。

ただし相続は例外です。いつ死ぬのかをコントロールすることはできないので、
胎児が不利益を受けるのを避けるためです。
しかし胎児は権利の主体ではありません。ではなぜ胎児が相続を受けられるのかというと、これについては

  • 解除条件説: 胎児が被相続権など限定的な権利の主体だとする説明方法
  • 停止条件説: 相続があったそのときにだけ被相続権を持っていたことにする説明方法

があります。